お彼岸と東雲寺

お彼岸と東雲寺

お彼岸

お彼岸の中日 春分の日や秋分の日には、昼と夜の長さがほぼ等しくなり、太陽は真東から昇って真西に沈みます。

町田市成瀬の東端に位置し、東方の小高い丘を背にしている東雲寺は、本堂が西向きに建てられた、めずらしいお寺です。

石畳と石段の参道も本堂正面からまっすぐ西方に伸びています。その先には町田の市街地があり、さらにその向こうには丹沢山地があります。晴れて大気が澄んでいるときなどには富士山も望むことができます。

お彼岸のころの夕方には、その丹沢の山並みに沈み行く太陽の光が、参道の桜並木の間から、本堂内陣のご本尊さまの方に向かって、すうっと差して来ます。このとき、夕日に照らされた参道が、まるで極楽浄土へと続く「二河白道(にがびゃくどう)」のようになります。二河白道とは「西方の極楽浄土に往生する信仰心を、北を貪欲の水の川、南を怒りの火の川にはさまれた細い清らかな道にたとえた語」(『大辞林』)とのことです。
経典によれば、私たちの住む人間界から西方十万億土の向こうに阿弥陀仏の浄土があるとされています。

真西に沈む夕日に浄土〔仏教の理想世界〕を思い、精進を重ねる、そうした仏道修行を行うことが、そもそもの彼岸会の意味であり、起こりであったと言われています。

古文書などがなく詳細不明ですが、400年ほど前、この場所に東雲寺を西向きに建てた当時の人たちには、そうした彼岸や浄土への信仰のような意識が強く働いていたのではないかと思われます。

彼岸=かなたの岸。目指す理想の境地。煩悩の激流ないし海の〈此岸〉から、修行によってそれを渡り切った向こう岸、つまり輪廻を超えた涅槃の境地のこと。わが国では、古くからの習俗と混交して、三月の春分と九月の秋分にそれぞれ七日間行われる彼岸会のことを指す。なお、菩薩の修行徳目であるさまざまな修行の完成である波羅蜜(パーラミータ)は、〈到彼岸〉とか〈度(渡)〉と漢訳されることもある。(『岩波仏教辞典』)